連載 No.18 2015年11月29日掲載

 

長い旅を共にするパートナー


 撮影に直接関わる道具ではないが、長い旅の時間を一緒に過ごす車は、自分にとって最も大切なパートナーだ。

機械にも生き物と同じように個性や相性があり、魂があると思っている。

何度も旅を共にして、車内泊を繰り返すとそんな気持ちは一層強くなる。

恥ずかしい話だが、長く乗った車にはそれぞれ名前があり、吹雪の現場から車に戻った時には思わず話しかてしまう。



車との相性というのは、性能や扱いやすさのことかもしれないが、自分の場合それだけではないようだ。

先代の車は中古で購入して15年間、廃車にするまで長い付き合いだったが、それ以前は同じ車種を新車から乗っていた。

 事故を起こしたわけでもないのに、新車を売って、わざわざ誰が乗っていたか分からな

い同じ車種の中古車に買い換えたのは、不思議な不満を覚えたからだ。



 「新車なのに」と思うと、小さな故障にも腹が立つ。塗装や内装が古びていくのが気に入らない

距離を走るごとに価値が下がっていくようで、乗っていても楽しくない。

ついには2度目の車検を受けることもなく買い換えてしまった。



新車には申し訳ないが、この中古車にはとても親しみを覚えた。おそらく1台として同

じものはない中古車を選ぶという行動が、自分の、“もの”への愛着の根底にあるのだろう。



この中古車と連れ立って、各地へ撮影に行った。

長い距離を走るうち何度も故障し、修理代もかさんだが不満を感じたことはない。

冬の北海道を1ケ月走るとゆうに5000㌔を超える。

旅の前後の整備も怠らないが、そんな信頼関係ゆえに無理をさせてしまったこともある。



4年前の冬。連日の大雪に悩まされながら日本海を回り、最北の稚内に着いた。

駐車場に止めようとすると、後輪に小石をはねたようなガリッとした感触。

少し走るとその感覚は消えたが、さらに500㌔ほど走った網走あたりで異音が大きくなった。

 大みそかで修理工場はどこもやっていない。



凍った路面にジャッキを立てて持ち上げてみると、幸いにタイヤが外れるようなガタはない。

積雪のある内陸を避けて海沿いを走るが、うまく回転しない後輪は時々引きずってすごい音を立てる。

1000㌔離れたフェリーターミナルに到着したのは正月休みが明けるころだった。

茨城の大洗港に着き、なじみの修理工場に引き取ってもらったが、ハブ以外にもさびがひどく、泣く泣く廃車になった



決死の覚悟で一緒に北海道から戻った“相棒”をなんとか復活させたかったが、

長い付き合いの修理屋も十分理解しての判断だったのだろう。

 今回のイメージは道東の野付半島。夏場は観光船でにぎわう桟橋だが、見渡す限りの氷原だ。

昨年末には高潮の被害もあったが、潮位や天候で表情の変わるすばらしい場所だ。

初めて“相棒”と訪れてから7年目の冬だった。